ULTRAARTS(ウルトラアーツ) | ウルトラアーツファンのための特別情報サイト

ウルトラアーツファンのための特別情報サイト

S.H.Figuarts(真骨彫製法)ウルトラマン 古谷敏氏インタビュー

2022.02.07

S.H.Figuarts(真骨彫製法)ウルトラマン 古谷敏氏インタビュー

来たぞ、我らの真骨彫ウルトラマン!
シリーズの原点であり、永遠のヒーローである“初代”ウルトラマンがついに真骨彫製法となって登場! これまで名アクターたちをスキャンしてきた同シリーズだが、今回はレジェンド・古谷敏氏を招聘。本物のウルトラマンが令和の世によみがえる。そもそもウルトラマンは古谷氏をイメージしてデザインされており、頭身やスタイル、その唯一無二のフォルムは古谷氏なしでは生み出されることはなかった。また、スペシウム光線、そしてウルトラマンならではの猫背ポーズにも、古谷氏だからこその誕生秘話が。 真骨彫開発エピソードとともに、ウルトラマン創成期について古谷氏が語る!

■S.H.Figuarts (真骨彫製法) ウルトラマン

――真骨彫の実物を目の前にして、感想はいかがですか?

古谷:すごいかっこいい! あと自分はこんな脚長いかなと。で、あらためて自分の体を見て、「やっぱりかっこいいな」と(笑)。ここまで出来上がったものを見ると、もう一歩(真骨彫が)私に近づいてきた感じがしますね。ソフビみたいにポーズが固定しているものはなくて、可動してポーズがかっこよく決まるのもすごくいいですね。

S.H.Figuarts(真骨彫製法)ウルトラマン 古谷敏氏インタビュー

――当時のウルトラマンと比べて、いかがですか?

古谷:同じですよね。それこそ真骨彫のスキャンのために、当時の体に近づけようと9キロ体重を落としましたからね。「体を作るから1か月待ってほしい」とお願いして。あの時はもう、すごいきつかったです。

――ベストな体形で取り組んでいただいたんですね。ご自身をスキャンされるのは初めてでしたか?

古谷:実は昔、フィギュアのためにスキャンをしたこともあったのですが、今回のように全身ではなかったです。今回、大々的なスキャンで、正直すごいなって思いました。やっぱりちょっと苦しい思いもしましたが、これを見て納得しました。

――本当にお疲れ様でした。

古谷:休憩なしでね、ずっとやりましたから(笑)。それに当時の撮影と比べたら、(苦労は)全然。虫に刺されたようなもんです。『ウルトラマン』の撮影は過酷でしたからね。BANDAI SPIRTISさんのスタジオは綺麗でしたし。もう(当時とは)全然、雲泥の差ですよ(笑)。

――スキャンでもっともこだわったポーズについてお聞かせください。

古谷:やっぱりスペシウム光線でしょう。よく皆さんに褒めていただける手の反り。これは私にしかできないと自負しています。これだけはね、自信があって、ちゃんと手を綺麗にしてるんですよ。そういう意味でも、一番の自慢のポーズです。もし、この“反り”ができなかったら、私は終わりですよね(笑)。

S.H.Figuarts(真骨彫製法)ウルトラマン 古谷敏氏インタビュー

――スペシウム光線のポーズはどのようにできたのでしょうか?

古谷:最初のウルトラマンなので、すべてに前例がないわけですよね。だからスペシウム光線の形も、やっぱり一から考えないといけない。東宝時代の先輩である中島春雄さんは、ゴジラのスーツアクターになったとき、上野動物園へ行って、いろんな動物を見て研究したと言ってましたけど、ウルトラマンは動物じゃないから上野に行っても研究もできない(笑)。当時いろいろな方に相談して。で、ウルトラマンは裸と一緒ですからね、武器もない。どうやって怪獣を倒すのか……そこからヒントとなったのは、力道山の空手チョップでした。

S.H.Figuarts(真骨彫製法)ウルトラマン 古谷敏氏インタビュー

――昭和の名プロレスラーの必殺技がモデルだったんですね。

古谷:要するに力道山は子供時代のヒーローでしたからね。空手一本でこれまで勝てなかった外国人レスラーをなぎ倒すんですから。まさに“水戸黄門の印籠”と一緒ですよね。空手チョップから現場でも飯島敏宏監督や光学撮影の中野稔さんたちと相談しながら作ったポーズです。カラータイマーがちゃんと見えるように角度も考えて。監督やカメラマンから言われたわけではないのですが、カラータイマーがきちっと見えたほうがかっこいいですからね。カメラ映りを考えながら、一日300回は三面鏡の前で練習していました。

――どんなポーズをとってもカラータイマーを見せることは、現在の円谷プロさんのレギュレーションとして、すべてのウルトラマンに引き継がれているそうです。

古谷:嬉しいことですよ、そうやっていただけるのは。苦労した甲斐があります。

――ポーズと言えば、猫背のような前傾姿勢のファイトスタイルも印象的で、真骨彫でもこだわったポーズになっています。

古谷:あの構えは「私の特許ではないかな」と思うくらい、こだわっていますから。やっぱりほかの人にはできない。映画『理由なき反抗』でジェームス・ディーンの格闘シーンを観たとき、私が主役になったら、このシーンをやりたいなと思っていたんです。で、ウルトラマンの主役に決まって、ぜひこれをやろうと。ジェームス・ディーンが格闘している姿を、ナイフを構えたポーズをそのまま演技に取り入れました。

  • S.H.Figuarts(真骨彫製法)ウルトラマン 古谷敏氏インタビュー
  • S.H.Figuarts(真骨彫製法)ウルトラマン 古谷敏氏インタビュー

――怪獣は四足歩行や二足歩行の人型など形状も多彩ですが、相手によって構え方の違いを意識されたのでしょうか?

古谷:もちろんその通りです。あのポーズで対峙してないと、すぐ飛びかかれないんですよ。相手の強弱もわからないですからね。それを見極めるためにあのポーズになってる、私の演技プランではね。

――真骨彫で再現したいポーズは?

古谷:スペシウム光線ですよ、絶対にね。ちゃんと再現できてましたから。スキャンってすごいですね。本当にラインが綺麗です。

S.H.Figuarts(真骨彫製法)ウルトラマン 古谷敏氏インタビュー

■ウルトラマンのデザイン

――ウルトラマンは成田亨さんのデザインですが、初めてデザインを見たときの印象をお教えてください。

古谷:いやあ、かっこいいと思いましたよ。まさに完成したデザインで。ウルトラマンになるまで、プロセスはいくつかあったわけですよ。最初の頃はまだ「ウルトラマン」という形ではなくてね、ただ平面ですからね。自分は入って動いた時にどうなるのか、私にはイメージできなくて。でも、成田さんはわかってたんですよね。成田さんは彫刻家ですからね。「古谷を入れるとこういう形になる」がすでに見えていたんです。

S.H.Figuarts(真骨彫製法)ウルトラマン 古谷敏氏インタビュー

――ウルトラマンは古谷さんあってのデザインなのは有名な話ですよね。

古谷:『ウルトラQ』でケムール人やラゴンを担当して、「こういう仕事はもう絶対やりません」と言っていたのに、ウルトラマンの主役が決まって。成田さんはケムール人からウルトラマンをイメージして、「古谷しかいない!」みたいなことを決めていらっしゃったようなんですよ。それこそオーディションすらしてないんだから(笑)。

S.H.Figuarts(真骨彫製法)ウルトラマン 古谷敏氏インタビュー

――スーツを着た印象はいかがでしたか?

古谷:マスクもスーツもまさに私に合わせて作ってますからね。違和感はなかったです。顔の寸法も、目と鼻と口と私に合わせていますからね。ただCタイプの時、すごい筋肉がモリモリした感じで、触感というか、感覚があんまり伝わってこないんですよ。何かが触れたとき、Aタイプみたいな自分の皮膚に当たっている感じがなくて。

――ダメージ吸収をできた、ということでしょうか?

古谷:そうですね。殴られても痛くはないんだろうけど、でも私自身としてはやりにくい。むしろ全部伝わってこないと。Aタイプ、最初のスーツの方が直接肌に伝わってきましたからね。動きも把握しやすかった。まあ、良し悪しですね。形としてはCタイプの方がいいのかもしれませんが、でも自分としては最初の方が好きですね。

――ちなみにウルトラセブンの時も、当初、古谷さんを考えてデザインしていて、実現しなかったことを残念がっていたとも言われていますが?

古谷:いやあ、セブンには入ってみたいと思いましたよ。だって最初見た時、かっこよかったですから。でも、その前にウルトラ警備隊のアマギ隊員役が決まってましたからね。お断りしてしまいました。セブンもね、今流行ってる“二刀流”ができれば……。セブンに入って、さらにアマギ隊員と両方できてればね。

――なるほど! その二刀流はすごいですね。

古谷:二刀流ができれば、また違ったセブンになったかもしれない。でも、ちょっと考えただけでも難しいよね。ウルトラマンであれだけ大変だったし。ただ、監督がオーケーならやったかもしれない(笑)。

■ウルトラマンの夢

――今や55周年と歴史ある作品となりましたが、古谷さんにとってウルトラマンはどんな存在ですか?

古谷:偉大ですよ。私が中で魂を吹き込んで、その吹き込んだものを映像にして、その映像をいろんなところに発信できたことは、いろんな方が自分のポジションで努力してきたからです。円谷プロダクションは、偉大な円谷英二監督の意思を今も引き継いでいますからね。円谷英二監督はアメリカへ特撮の文化を広めた人ですし。その辺を少しでもフォローできればと、私たちもアメリカで仕事をしています。アメリカの発信力はすごいよね。世界規模ですから。もう特撮は日本だけではないですよ。ただちょっと、日本の特撮が薄れてきたけど。CGが多すぎて(笑)。

S.H.Figuarts(真骨彫製法)ウルトラマン 古谷敏氏インタビュー

――海外のファンはいかがですか?

古谷:本当にすごいですよ。「外国の方ってこんなに涙流すのかな?」ってくらい嬉しい涙で。それが50歳くらいの方ですからね。もちろん今は世界中の子供たちがウルトラマンに驚喜してるわけですよ。最近のイベントでは、日本でも昔からのファンだけじゃなく、20代とか当時を知らない若いファンも並んでくれます。

――今でもウルトラマンは圧倒的な存在感があると思います。

古谷:うん。これからもそうあってほしいですね。そういう意味でも、円谷プロさんの努力次第です(笑)。

――新しいウルトラマンもたくさんいる中で、初代のウルトラマンを好きな子供たちも多いそうです。

古谷:昔の子供だけじゃないですよね、今の若い人も。この前、イベントで新しいウルトラマンを観ている子供たち、7歳と10歳の兄弟の話を聞いたんです。今のウルトラマンを観ているけど、最終的には私のウルトラマンを一番好きだと言ってくれて。今は初代よりかっこいいウルトラマンがいっぱいいますよね? 子供にとっては、青とか赤とかカラフルで派手な方がかっこいいと思うんですけどね。嬉しいことです。永遠に、そういう人たちが続いてくれればね。

――当時、永遠のヒーローになる予想はされていましたか?

古谷:いやあ、しません。当時のスタッフ、誰もしてないですよ。それこそ成田さんもしてないでしょうし。当時、子供向け番組は、放送が終わったらそれまでなんですよ、普通は。だって子供は大きくなって卒業しちゃいますから。もう観なくなってしまいますからね。でも、50年経ってもまだウルトラマンは新鮮。やはりデザインが新鮮ですよ。

――60周年もきっとあっという間ですね。

古谷: 60周年記念まではなんとか私も元気でいたいですね。60周年で83歳になるんですよ。今の夢なんですけどね、ウルトラマンのスーツがまだあるので、その中に入ってスペシウム光線をやりたいなと。新しいウルトラマンと、私の初代ウルトラマンが並んでる姿を撮ってみたいです。

S.H.Figuarts(真骨彫製法)ウルトラマン 古谷敏氏インタビュー

――これはファンにとっても、ぜひ叶えてもらいたい夢ですね。

古谷:ウルトラマンは夢をちゃんと届けてくれますよ。嬉しいことです。当時、一緒に苦労して、一生懸命作品を作った仲間たちの多くが光の国へ行ってしまいましたが、私が地球にいるうちは、伝道師として、ウルトラマンの良さを世界中に伝えていかないと。

――では、最後に真骨彫を楽しみに待っているファンへメッセージをお願いします。

古谷:これを見て、やっと本物に近いフィギュアができた感じがしています。お世辞じゃなくてね。ファンであれば、絶対に手にとって家宝にしてほしいですね。全世界の人が持ってていただきたいです。ウルトラマン本人として、私の大推薦です。

――ありがとうございました。

  • S.H.Figuarts(真骨彫製法)ウルトラマン 古谷敏氏インタビュー
  • 古谷敏(ふるや びん)
    ■PROFILE
    1943年、東京都出身。東宝撮影所に第15期ニューフェースで入社。『ウルトラマン』では主役・初代ウルトラマンのスーツアクター、さらに『ウルトラセブン』ではアマギ隊員として出演。また『ウルトラQ』のケムール人やラゴンも担当。回想録となる著書『ウルトラマンになった男』でも、数々の誕生秘話が語られている。
Cookie Settings 简体中文